いい調味料を一度使うと、たいてい前のものには戻れなくなります。けれど売り場に並んでいる状態では、その違いを確かめる手立てがありません。何を買えばいいか分からないまま選んでいる人のかわりに、先に試しておく。そのためにこのサイトをつくりました。
選ぶときの基準は、一生使い続けられるかどうかです。通年で同じものが買えること、一度使ったら前のものに戻れないこと、特別な日ではなく明日も使えること。この三つが揃わないものは載せていません。高いから、珍しいから、昔ながらだから、では選びません。
それを確かめるために、産地に足を運んでいます。つくり手に会って、蔵を見せてもらい、なぜその造り方なのかを聞く。パッケージの表示や受賞歴からは分からないことが、その場にはあります。
千葉県鎌ケ谷市の私市醸造さんでは、蔵に並ぶ杉の木桶を見せていただきました。一基を七十年使い、傷んだらばらして組み直し、そこからまた三十年使うのだそうです。原料の酒粕も、仕込む前に三年寝かせる。良し悪しがそれだけ待たないと分からないからだと伺いました。いまは二十四時間で酢をつくる技術もあります。それでもこの造り方を変えていません(記事を読む)。
千葉県香取市の酢之宮醸造所さんの柿酢は、原料が柿だけで、水も酵素材も一滴も加えません。四季にまかせて三年以上寝かせます。「土地や空気にいる細菌がいい」から香取に移った、というお話が印象に残っています。同じ造り方でも、場所が変わると同じものにはならない。代表の方は「たくさんの人に知ってもらうことが最終目的ではない」ともおっしゃっていました(記事を読む)。
こうしてつくられたものは、たいてい大きな売り場には並びません。広告を出す体力のある会社が勝ち、いいものをつくっている小さな蔵が知られないまま終わる。それが調味料の売り場で起きていることだと思っています。つくり手と、それを探している人との間をつなぐのがこのサイトの役割です。
目指しているのは、調味料を選ぶ文化をつくることです。日本には四十七都道府県それぞれに、その土地の水と気候でしか成り立たない調味料があります。それを一つずつ訪ねて、記録して、選べる形にしていきます。
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