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甘露醤油の本命2本|柳井・佐川醤油店と小豆島ヤマロク

甘露醤油とは

  • 甘露醤油とは、できあがった生醤油でもう一度仕込む「再仕込み醤油」の別名
  • 原料も手間も通常の醤油の約2倍。塩分は約12〜14%と濃口(約16%)より低く、旨みは濃口を上回る「低塩・高旨味」。
  • 名前は江戸時代、岩国藩主が味を賞して「甘露、甘露」と唸ったという逸話に由来するとされています。
  • 加熱には向かない。刺身・卵かけご飯・冷奴など「かけ・つけ」で真価を発揮します。
  • 代表格は山口・柳井の佐川醤油店「甘露しょうゆ」(天保元年=1830年創業)と香川・小豆島のヤマロク醤油「鶴醤」

「甘露醤油」という名前を初めて見た人は、砂糖のように甘い醤油を想像するかもしれません。けれど、これは甘さの度合いを表す言葉ではありません。ある製法と、一つの逸話に由来する呼び名です。

その製法とは「再仕込み」。そして逸話の舞台は、山口県・柳井の白壁の町です。

甘露醤油とは:「再仕込み醤油」の別名

甘露醤油の正体は、再仕込み醤油です。通常の醤油は、蒸した大豆と炒った小麦の麹を塩水と合わせて仕込みます。再仕込みでは、この塩水の代わりに、すでにできあがった生醤油を使ってもう一度仕込むのです。

醤油で醤油を仕込む。だから原料も手間も、およそ2倍かかります。その分、塩分は濃口醤油より低く抑えられ、旨み成分は濃口を上回ります。「低塩・高旨味」という、贅沢な性質を持つ醤油になるわけです。とろりと濃く、なめると旨みが舌に残る。まさに「甘露」と呼びたくなる味わいです。

甘露醤油と再仕込み醤油の違いは?

結論から言えば、中身は同じです。JAS規格の分類名が「再仕込み醤油」、山口県・柳井を中心に古くから使われてきた呼び名が「甘露醤油」。同じものを別の角度から呼び分けているだけです。

全国どこの再仕込み醤油でも甘露醤油と呼んで差し支えはありませんが、狭義には柳井で240年続く再仕込み醤油の呼称として使われるとされています。

甘露醤油の名前の由来:藩主が「甘露、甘露」と唸った

話は江戸時代の天明年間(1781〜89年)にさかのぼります。柳井の醸造家・高田伝兵衛が、新しく造った醤油を岩国藩主・吉川公に献上したところ、藩主は一口なめてこう言ったと伝えられています。「甘露、甘露」。

甘露とは、天から降るという甘い露のこと。以来240年、この地で造られる特別な醤油は「甘露醤油」と呼ばれるようになったとされています。名前そのものが、味への最上級の賛辞なのです。

砂糖やみりんは一切入っていません。甘さの正体は、砂糖ではなく「塩分が低いこと」と「旨み成分が濃いこと」にあります。塩けが引っ込むと、相対的に甘みと旨みが前に出るからで、西京味噌が甘く感じられるのと同じ理屈です。

甘露醤油と普通の醤油はどう違うのか

JAS規格では、醤油は濃口・淡口・溜まり・再仕込み・白の5種類に分類されます。甘露醤油はこのうち再仕込みにあたります。並べると位置がはっきりします。

種類 仕込み 塩分の目安 向く使い方
濃口 塩水で1回 約16% 万能。加熱調理にも
淡口 塩水で1回(塩分高め) 約18% 色を付けたくない煮物
再仕込み(甘露醤油) 生醤油でもう1回 約12〜14% かける・つける
溜まり ほぼ大豆のみ 約16% 刺身、照り
小麦主体 約17% 色を出さない吸物

意外に思われるのが、淡口の塩分が濃口より高いことです。色を薄く仕上げるために発酵を抑える必要があり、その役割を塩が担っています。「淡い=薄味」ではありません。

甘露醤油の立ち位置は、この5種類の中でもっとも塩分が低く、もっとも旨みが濃い。「塩けは控えめに、それでいて満足感がほしい」という要求に、真正面から応える醤油です。

甘露醤油は加熱には向かない

もっとも実用的な注意はここです。甘露醤油は煮物や炒め物に使うと、持ち味がほとんど残りません

再仕込みで蓄えた香りの成分は熱で飛びやすく、旨みも他の調味料に埋もれます。原料2倍・手間2倍の一本を加熱調理に使うのは、率直に言ってもったいない使い方です。火を通さない料理に限って使うと考えておくと失敗しません。普段の煮物には、これまでどおり濃口醤油を使ってください。

甘露醤油のおすすめ:柳井・佐川醤油店と小豆島・ヤマロク醤油

甘露醤油を語るなら、この2本は外せません。

佐川醤油店「甘露しょうゆ」(山口県・柳井)

甘露醤油という呼び名の本家が、天保元年(1830年)創業の佐川醤油店です。地下70mから汲み上げる琴石山系の伏流水と、30石の大きな杉桶。昔ながらの道具と製法で、時間をかけて再仕込みを続けています。白壁と格子の町並みが残る柳井で、蔵は資料館としても公開され、旅人を迎えています。

300mlで900円前後と、贈り物にも自分の食卓にも手が届く価格帯です。

ヤマロク醤油「鶴醤」(香川県・小豆島)

もう一本の代表格が、木桶仕込み醤油の聖地・小豆島のヤマロク醤油「鶴醤」です。1〜2年かけて仕込んだ生醤油を、塩水の代わりにもう一度使い、大豆と小麦とともに再び木桶へ。原料は2倍、歳月はおよそ4年。気の遠くなるような手間の先に、とろりと濃厚な旨みが生まれます。

500mlで2,000円台と甘露しょうゆより高価ですが、飲み比べると再仕込み醤油の奥深さがよく分かる一本です。

甘露醤油はどこで買える?

一般的なスーパーで甘露醤油を見かけることは、正直あまり多くありません。取扱いの中心は次の3つです。

「近所のスーパーで見つからない」と諦める必要はありません。むしろ甘露醤油は、通販でこそ本命の一本に出会える醤油です。

甘露醤油の楽しみ方:真価は「かけ・つけ」で

一度知ると、普段のかけ醤油に戻れなくなります。甘露の名は、伊達ではありません。

よくある質問

甘露醤油とは何ですか?

甘露醤油とは、できあがった生醤油を塩水の代わりにもう一度使って仕込む「再仕込み醤油」の別名です。原料も手間も通常の醤油の約2倍かかり、塩分は約12〜14%と濃口(約16%)より低いのに旨みは濃口を上回る、とろりと濃厚な醤油になります。名前の由来は江戸時代、岩国藩主が味を賞して「甘露、甘露」と唸ったという逸話とされています。

甘露醤油と再仕込み醤油は違うものですか?

中身は同じです。JAS規格の分類名が「再仕込み醤油」、山口県・柳井を中心に古くから使われてきた呼び名が「甘露醤油」です。全国どこの再仕込み醤油でも甘露醤油と呼んで差し支えはありませんが、狭義には柳井で240年続く再仕込み醤油の呼称として使われます。

甘露醤油と普通の醤油(濃口)は何が違いますか?

通常の濃口醤油は塩水で一度だけ仕込みますが、甘露醤油は生醤油でもう一度仕込む「再仕込み」です。そのため塩分は濃口より低めに抑えられ、旨み成分は濃口を上回る「低塩・高旨味」になります。加熱調理より、かけ・つけで真価を発揮するタイプです。

甘露醤油はどんな料理に合いますか?

白身魚やイカの刺身のつけ醤油が本命です。卵かけご飯、冷奴、うなぎの仕上げなど「かけて完成する」料理で、とろりとした旨みが引き立ちます。加熱調理には向きません。

甘露醤油は甘いのですか?砂糖やみりんが入っていますか?

砂糖やみりんは加えていません。「甘露」は江戸時代に岩国藩主が味を賞して発した言葉が由来とされ、甘さの度合いを表す名前ではありません。実際の甘みは、塩分が約12〜14%と濃口醤油の約16%より低いことと、再仕込みによって旨み成分が濃いことから生まれる相対的なものです。

甘露醤油はどこで買えますか?

一般的なスーパーで見かけることは少なく、蔵元の直販サイト・通販モール・こだわりの調味料を扱う専門店が中心です。山口県柳井の佐川醤油店「甘露しょうゆ」は蔵元公式サイトで購入でき、香川・小豆島のヤマロク醤油「鶴醤」は通販で広く流通しています。

甘露醤油は煮物や炒め物に使えますか?

使えますが、おすすめしません。再仕込みで蓄えた繊細な香りは加熱で飛びやすく、旨みも他の調味料に埋もれてしまいます。原料も手間も通常の2倍かけた醤油なので、刺身・卵かけご飯・冷奴など火を通さない料理に使ってください。煮物には濃口醤油のほうが適しています。

甘露醤油の保存方法と賞味期限は?

開封後は冷蔵庫で保存し、1〜2ヶ月を目安に使い切ってください。醤油は空気に触れると酸化して色が黒ずみ、香りが鈍ります。特に甘露醤油は香りが持ち味のため、劣化が味に直結します。卓上に出しっぱなしにせず、使うたびに冷蔵庫へ戻すのが最も確実です。

この記事で紹介した一本